東京地方裁判所 平成11年(ワ)2918号 判決 2000年11月28日
原告
シチズン時計株式会社
右代表者代表取締役
【A】
右訴訟代理人弁護士
田倉整
同
会田恒司
右補佐人弁理士
【B】
被告
ユニバーサル・インスツルメンツ・ジャパン株式会社
右代表者代表取締役
【C】
右訴訟代理人弁護士
阿部佳基
同
松留克明
同
和田信博
同
渡辺広己
同
千種道夫
同
中島麻里
右補佐人弁理士
【D】
同
【E】
同
【F】
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金一億一八八〇万円及びこれに対する平成一一年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 争いのない事実等
1 原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。また、本件実用新案に係る明細書(甲二)を、「本件明細書」という。)を有していたが、右実用新案権の存続期間は平成一一年九月一二日をもって満了した。
登録番号 第一八八九〇五五号
発明の名称 テーピング部品の供給装置
出願日 昭和五九年九月一二日
出願公告日 平成三年三月一五日
登録日 平成四年二月二五日
実用新案登録請求の範囲
「多数の電子部品をテープに配列したテーピング部品を電子部品自動組付機の組付位置に向けて順次に送入する複数個の供給ユニットを有するテーピング部品供給装置において、前記組付位置の後方に横長に延設した供給台上にテーピング部品を幅広に供給する第1の供給ユニットと、テーピング部品を幅挟に供給する第2の供給ユニットとを前記供給台上に予め位置決めピンで定めた取付位置幅毎に並列して取付可能にし、このとき前記第1の供給ユニットの取付位置幅が前記第2の供給ユニットの取付位置幅の整数倍又は整数比に形成されていることを特徴とするテーピングの部品供給装置。」
2 本件考案の構成要件は、次のとおり分説される。
(一) 多数の電子部品をテープに配列したテーピング部品を電子部品自動組付機の組付位置に向けて順次に送入する複数個の供給ユニットを有するテーピング部品供給装置において、
(二)(1) 前記組付位置の後方に横長に延設した供給台上に
(2) テーピング部品を幅広に供給する第1の供給ユニットと、テーピング部品を幅狭に供給する第2の供給ユニットとを
(3) 前記供給台上に予め位置決めピンで定めた取付位置幅毎に並列して取付可能にし、
(三) このとき前記第1の供給ユニットの取付位置幅が前記第2の供給ユニットの取付位置幅の整数倍又は整数比に形成されていること
(四) を特徴とするテーピングの部品供給装置。
3 被告は、平成七年一月ころより、テーピング部品供給装置を備えた電子部品装着装置を輸入、販売している。
4 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は、構成要件(二)(1)を充足する。
二 本件は、本件実用新案権を有していた原告が、被告に対し、被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は本件考案の技術的範囲に属するから、右輸入販売は右実用新案権の侵害であると主張して、右侵害による損害の賠償を求める事案である。
第三争点及びこれに関する当事者の主張
一 争点
1 被告の輸入販売している電子部品装着装置の特定
2 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置が構成要件(一)を充足するか
3 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置が構成要件(二)(2)を充足するか
4 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置が構成要件(二)(3)を充足するか
5 被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は公知技術を利用したものか
6 本件考案の有効性
7 損害の発生及び額
二 争点に対する当事者の主張
1 争点1について
(原告の主張)
被告の輸入販売している電子部品装着装置は、別紙原告目録記載のとおり特定される。
(被告の主張)
被告の輸入販売している電子部品装着装着は、別紙被告目録記載のとおり特定される。
2 争点2について
(原告の主張)
本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「電子部品」を限定するような記載はないから、テーピング部品を供給するものであれば、全ての装置が構成要件(一)の「電子部品自動組付機」に含まれる。
本件明細書の「考案の詳細な説明」においても、「電子部品」を限定する記載は一切無く、また、供給台上に幅の異なる供給ユニットを取り付けるにつき、最も有効な台数比と配列による取付を可能にするという本件考案の作用効果は、供給する電子部品の種類を問わない。
被告の輸入販売している電子部品装着装置も、テーピング部品を供給するものであるから、構成要件(一)を充足する。
(被告の主張)
被告の輸入販売している電子部品装着装置は、リード線を有しない平面状の電子部品である表面実装部品(多数の表面実装部品をテープに配列した表面実装テーピング部品を含む。)を供給するものであって、電子部品のうちアキシアル部品やラジアル部品のようなリード線を持つ電子部品を供給することはできないから、構成要件(一)を充足しない。
3 争点3について
(原告の主張)
供給台上に幅の異なる供給ユニットを取り付けるにつき、最も有効な台数比と配列による取付を可能にするという本件考案の作用効果に照らすと、本件考案で考慮されるのは供給ユニットの幅の広狭であって、テーピング部品の姿勢が縦か横かではない。したがって、「テーピング部品を幅広に供給する第1の供給ユニット」とは、テーピング部品の幅が広いことによる幅の広い供給ユニットを意味し、「テーピング部品を幅狭に供給する第2の供給ユニット」とは、テーピング部品の幅が狭いことによる幅の狭い供給ユニットを意味する。
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は、幅の広い供給ユニットと、幅の狭い供給ユニットを有するから、構成要件(二)(2)を充足する。
(被告の主張)
本件明細書の「考案の詳細な説明」の記載によると、構成要件(二)の「幅広に供給する」とは、アキシアルリードテーピング部品のようなテーピング電子部品を、「水平面が幅広な状態」すなわち「各電子部品を供給ユニットの水平面に平らに寝かせた幅広な状態(平姿勢)」で供給することと解され、また、右構成要件の「幅狭に供給する」とは、ラジアルリードテーピング部品のようなテーピング電子部品を、「水平面の投影面が幅狭な状態」すなわち「各電子部品を供給ユニットの水平面に立てた幅狭な状態(縦姿勢)」で供給することと解される。
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置は、アキシアル部品やラジアル部品のようなリード線を有する電子部品を供給するユニットを取り付けることができない。また、右装置には、テーピング電子部品を「水平面の投影面が幅狭な状態」すなわち「各電子部品を供給ユニットの水平面に立てた幅狭な状態(縦姿勢)」で供給する供給ユニットが存在しないから、本件考案のように部品の供給姿勢で区別される供給ユニットが存在しない。
したがって、右テーピング部品供給装置は、構成要件(二)(2)を充足しない。
4 争点4について
(原告の主張)
本件考案の「位置決めピン」は、①供給台に取り付けられる供給ユニットの位置を決める機能、②供給ユニットの取付幅を定める機能を有する。
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置における位置決めピンも、右の各機能を有する。
(一) 右テーピング部品供給装置において、部品供給ユニット載置台に設けられたスロットに、供給ユニットの底部に設けられた逆T字状スロットの突起を係合しただけでは、電子部品取出部のある供給ユニットの頂部は大きく不安定で位置が定まらないことから、最終的には位置決めピンにより頂部の位置決めがされる。このように、右テーピング部品供給装置が電子部品実装機として機能するうえで必須の電子部品取出部の位置決めは、位置決めピンによってなされ、スロットは、位置決めピンと供給ユニットとの係合作業を容易にするためのガイドラインとして主に機能しているにすぎない。
(二) 右テーピング部品供給装置において、各位置決めピンの間(間隔)を二分する位置から隣の位置決めピンの間(間隔)を二分する位置までが一つの基準となる取付位置幅となっており、この取付位置幅は、等間隔に設けられた位置決めピンによって定まる。
右テーピング部品供給装置において、右の基準となる取付位置幅の整数倍の取付位置幅が設定される構成になっているが、供給ユニットの底部をスロットに係合させる場合、スロットのピッチは位置決めピンのピッチと同一にしなければならないから、右取付位置幅は、スロットと位置決めピンの双方によって定められる。したがって、供給ユニットの取付位置幅を定めるという機能の点では、スロットと位置決めピンは同価値であり、むしろ、位置幅の設定精度においては、位置決めピンの方が勝っている。また、「供給ユニットの取付位置幅」とは供給ユニットの底部及び頂部を含む供給ユニット全体の取付位置幅をさすが、右部品供給装置においては、電子部品取り出し部が供給ユニットの頂部にあることから、位置決めピンが存する頂部の取付位置幅が重要である。
(被告の主張)
本件考案の「位置決めピン」は、本件明細書の記載によると、供給台に等間隔に穿設されたピン穴に挿し込むことで、供給面を部品供給ユニットの幅毎に分割し、部品供給ユニットを所定の取付位置に正確に取り付ける機能を有するものである。
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピング部品供給装置においては、部品供給ユニット挿入台の長手方向一杯に同一幅の逆T字状スロットが等間隔に設けられており、これにテーピング部品供給ユニットを所望の位置に差し込むことにより、右供給ユニットの位置決めは完了する。その上で、位置決めされた右供給ユニットの頂部の横揺れを防止し、垂直方向の安定化を図るため、①右供給ユニットの半円状の切り抜き部と揺れ防止用フックとを係合し、さらに、②右供給ユニットの後方底部のラッチによって部品供給ユニット挿入台に固定するという構造になっている。
このように、右テーピング部品供給装置においては、揺れ防止用フックは、位置決めに関与しておらず、揺れ防止用フックにより定められる取付位置幅なる概念はそもそも存在しない。
また、右テーピング部品供給装置の揺れ防止フックは、等間隔に配置されているため、本件考案の「位置決めピン」のように「予め取付幅を定める機能」を果たすことはない。
5 争点5について
(被告の主張)
被告の輸入販売している電子部品装着装置のテーピングの部品供給装置は、本件考案の出願前に、米国特許公報に掲載されて公知となった左記の特許(以下「富士特許」という。)を実施したものである。
米国特許第四四三八五五九号
特許出願日 昭和五六年六月二五日
特許発行日 昭和五九年三月二七日
右特許の技術は、複数の幅のカートリッジを同一支持台上に取り付けることが可能な構造を予定しており、「同一の取付台上に異なる幅の供給ユニットを同時に並列して取り付ける」という技術思想が開示されている。
(原告の主張)
富士特許の技術は、供給台上に取り付けられるカートリッジの幅が一定であることを前提とした技術であって、異なる幅のカートリッジを使用することが可能なものではないから、本件考案とは技術内容が異なる。
6 争点6について
(被告の主張)
(一) 本件考案は、本件考案の出願前に米国特許公報に掲載されて公知となった富士特許と同一の技術内容であり、新規性を欠くか、又は、当業者であれば、富士特許の技術内容から極めて容易に想到しうるものであり、進歩性を欠く。
(二) ダイナパート社製の部品装置「チップ・プレーサー」MPS100、MPS100TC、MPS118、MPS500(以下同装置の技術を「ダイナパート技術」という。)は、昭和五九年一月二五日から二八日までの間に東京都内で開催された「インターネプコン・ジャパン/セミコンダクター展、84」への出品、同年二月ころにおける技術仕様書の頒布及びカタログの頒布によって、本件考案の出願前に公知であったが、右装置は、部品キャリッジの同一の枠内に異なった幅のテープフィーダーを混載することができ、それらが整数倍又は整数比となるものであるから、本件考案と同一の技術内容のものである。したがって、本件考案は、新規性を欠くか、又は、当業者であれば、右技術から極めて容易に想到しうるものであり、進歩性を欠く。
(三) 本件考案は、その出願前に存在した富士機械製造株式会社の電子部品自動装着機FEPー20及び三洋電機株式会社のチップ形電子部品装着装置TCMー40との関係でも、新規性を欠くか、又は、当業者であれば、右の各装置の技術から極めて容易に想到しうるものであり、進歩性を欠く。
(原告の主張)
(一) 富士特許の技術は、供給台上に取り付けられるカートリッジの幅が一定であることを前提とした技術であって、異なる幅のカートリッジを使用することが可能なものではないから、本件考案とは技術内容が異なるし、また、本件考案が、富士特許の技術内容から極めて容易に想到し得るものであるとはいえない。
(二) ダイナパート技術では、本件考案における「供給台」に対応する「枠」ごとに異なった幅のテープフィーダーを装着することができるが、同一の「枠」では異なった幅のテープフィーダーを装着することはできないから、本件考案と技術内容が異なるし、また、本件考案が、ダイナパート技術から極めて容易に想到し得るものであるとはいえない。
(三) 富士機械製造株式会社の電子部品自動装着機FEPー20及び三洋電機株式会社のチップ形電子部品装着装置TCMー40は、幅の異なるテープフィーダーを混載できるものではないから、本件考案と技術内容が異なるし、また、本件考案が、右の各装置の技術から極めて容易に想到し得るものであるとはいえない。
7 争点7について
(原告の主張)
被告の電子部品装着装置の販売価格は一台約二四〇〇万円であり、平成七年一月から平成一一年二月九日までの期間の販売台数は三三台を下らない。また、その利益率は一五パーセント以上であるので、被告は右期間の右装置の販売により一億一八八〇万円の利益を得ている。したがって、原告は、右同額の損害を被った。
(被告の主張)
原告の右主張は争う。
第四当裁判所の判断
一 争点1について
証拠(甲三、四、検乙一、検乙三ないし五)と弁論の全趣旨によると、被告の輸入販売している電子部品装着装置は、別紙物件目録記載のとおりであると認められる(以下、右目録記載の電子部品装着装置のテーピング部品供給装置を「被告装置」という。)。
二 争点4について
1(一) 証拠(甲二)によると、本件明細書の考案の詳細な説明に、テーピング部品供給装置の従来技術の問題点として、テーピング部品供給ユニットの取付台数比を適宜に選定することが不可能であり、電子部品の取付機能上で融通性に欠ける点が挙げられ、右課題の解決手段として、テーピング部品供給ユニットの取付位置幅を基準幅の整数倍又は整数比とすることで、必要に応じて、テーピング部品供給ユニットの取付台数を適宜増減でき、かつ、同一取付台広さで最も有効な台数比と配列でテーピング部品供給ユニットを取り付けることが可能になったとの記載及びテーピング部品供給ユニットは、予め位置決めピンで定めた取付位置幅の間隔で配列可能にするとの記載があること、「位置決めピン」の実施例として、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立って、供給台に穿設されているピン孔に、挿脱自在に設けられている位置決めピンを挿入することによって、テーピング部品供給ユニットを所定の位置に正確に取り付ける技術のみが開示されていること、考案の効果として、位置決めピンの挿着位置の交換によって両供給ユニットの取り付け台数の増減を簡単に行い得るようにしたことから、プリント基板に対する電子部品の挿入条件、つまり電気的設計条件に変化があって挿入される電子部品の種類や数量が変化した場合にもそれに直ちに順応する機能上幅広い融通性を発揮できる効果があるとの記載があること、以上の事実が認められる。
(二) 本件実用新案登録請求の範囲の記載に右の(一)の事実及び弁論の全趣旨を総合すると、本件考案における「取付位置幅」は、「テーピング部品供給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を意味しており、テーピング部品供給ユニット自体の幅を意味するものではないと認められる。
(三) 本件実用新案登録請求の範囲の「予め位置決めピンで定めた取付位置幅」との文言に右の(一)の事実を総合すると、構成要件(二)(3)の「位置決めピン」とは、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立ち、供給台を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「取付位置幅」を定め、各テーピング部品供給ユニットが、供給台の幅方向における正確な位置に取り付けられるようにするものと解することができる。
2 原告は、被告装置の部材⑪が、「位置決めピン」に当たると主張する。
前記一認定に係る別紙物件目録の記載に証拠(甲三、四、検乙一、検乙三ないし五)と弁論の全趣旨を総合すると、部材⑪は、部品供給ユニット挿入台⑧上に平行で等間隔に設けられた逆T字型スロット⑨に対応して、供給台⑤の壁⑩に等間隔で固着されていること、部品供給ユニット③、④を部品供給ユニット挿入台⑧に取り付ける際、部品供給ユニット③、④の底部を逆T字型スロット⑨に差し込むことで、部品供給ユニット挿入台⑧上の幅方向の取付位置が定まり、その後、右部品供給ユニット③、④を、右逆T字型スロット⑨の奥まで差し込み、部品供給ユニット③、④の頂部にある半円状の切り欠き部⑭を、部材⑪と係合させて、右頂部を壁⑩の所定の位置に取り付けること、以上の事実が認められる。
以上の事実によると、被告装置は、部品供給ユニット③、④を取り付ける場合には、その底部を逆T字型スロット⑨に差し込む構造になっているから、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立ち、「ピン」によって、供給台を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「テーピング部品供給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を定める必要のないものである。また、部材⑪は、供給台⑤の壁⑩に等間隔で固着されているから、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立って、供給台を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「テーピング部品供給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を定めることができるものではないし、実際に定めているとも認められない。したがって、部材⑪が、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立ち、供給台を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「テーピング部品供給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を定めるものとは認められない。
被告装置において、部品供給ユニット③、④の幅方向の取付位置は、その底部を逆T字型スロット⑨に差し込み、部品供給ユニット③、④の頂部にある半円状の切り欠き部⑭を、部材⑪と係合させて、右頂部を壁⑩の所定の位置に取り付けることで定まるということができるから、部材⑪は、右のような意味では、位置決めをしているということができる。しかし、右1で述べたとおり、本件考案にいう「位置決めピン」は、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立ち、供給台を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「テーピング部品供給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を定めるものであるから、部材⑪が、部品供給ユニット③、④を取り付ける際に、その具体的な位置を定めるものであったとしても、テーピング部品供給ユニットを取り付けるに先立ち、供給台を、各テーピング部品供給ユニットの幅に合わせて分割して、「テーピング部品供給ユニットを取り付け得る供給台上の場所(スペース)の幅」を定めるものでない以上、本件考案にいう「位置決めピン」に当たるということはできない。
したがって、部材⑪は、「位置決めピン」に当たらない。
以上によると、被告装置は、構成要件(二)(3)の「位置決めピン」を充足しない。
3 したがって、その余の点につき判断するまでもなく、被告装置が本件考案の技術的範囲に属するとは認められない。
三 よって、原告の本訴請求は、理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 森義之 裁判官 岡口基一 裁判官 男澤聡子)
<以下省略>